大腸ポリープと大腸がん
大腸ポリープは、良性でも放置していると大腸がんになる場合があります。そのため、ポリープの段階で切除してしまえば、大腸がんの効果的な予防になります。 大腸がんのほとんどは大腸ポリープから発生し、やがて進行がんになって転移をもたらします。大腸がんは遺伝的な要因もありますが、食生活なども発症に大きく関わるため、近年になって日本で患者数が増え続けています。罹患数だけでなくがんによる死亡数でも大腸がんは年々増加しており、2020年には男女とも第1位になると考えられています。
大腸がんは進行しないと自覚症状に乏しいため、症状がないうちから定期的な大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。ポリープ(前がん病変)や、早期がんのうちに発見し、摘出することが重要です。当院では検査中にポリープが発見された場合、その場で日帰り切除手術を行うことが可能です。
日帰り大腸ポリープ切除
当院では、検査前にご同意をいただいた方には、内視鏡検査の際に発見した大腸ポリープをその場で切除する日帰り手術を行っています。検査と治療がその日のうちに終了するため、食事制限や下剤の服用が一度で済み、別日のスケジュール調整が必要ないため、お仕事などへの影響も抑えらえれます。ただし、安全に受けていただくためには下記のような注意事項がありますのでご確認ください。
別日の切除が必要なケースもあります
体調・年齢・既往症・抗血栓薬の服用・ポリープの数や大きさなどにより、検査日とは別に改めて切除を行う必要が生じることもあります。
術後の制限
大腸ポリープを切除した後は、術後出血などの合併症を予防するためにいくつか守っていただくことがあります。
- 当日の安静
- 食事制限(1〜3日)
- 禁酒(1週間程度)
- 激しい運動、旅行、出張などの禁止(1〜2週間)
などです。制限期間に関しては、切除したポリープの大きさや型などによって変わるため、術後医師の指示に従って下さい。
そのため、検査日をお決めいただく際には、切除を行った場合の術後スケジュールも含めてご検討いただく必要があります。
再診について
術後の様子を確認するとともに、切除したポリープの組織検査結果を説明致しますので、10日前後で再度ご来院ください。
大腸ポリープ切除の内容
大腸ポリープ切除にはいくつかの手法があり、ポリープの形状などに合わせて適切な手法で手術しています。切除したポリープは回収し、病理検査を行い、がん細胞の有無などを調べます。
ポリペクトミーとコールドポリペクトミー
ポリープにスネアと呼ばれるループ状のワイヤーをかけて締め付けて切り取る手法で、5~10ミリ程度の小さなポリープを安全に切除できます。通常のポリペクトミーはスネアをかけてから電気を流して焼き切る方法で、コールドポリペクトミーは電流を使わずに締め付けることで切除します。ポリペクトミーは切除中の出血が少ないのですが、電流が粘膜より下の層にまで伝わってしまうと術後出血を起こす可能性があります。コールドポリペクトミーは切除中の出血は多くなりますが止血をすることで抑えられ、術後出血が少ないというメリットがあります。内視鏡的粘膜切除術(EMR)
平坦な大腸ポリープや早期大腸がんなど、そのままではスネアをかけられない場合に使われる手法です。病変の下に生理食塩水などを注入して粘膜層を持ち上げ、そこにスネアをかけて電流を流して焼き切ります。病変の下に生理食塩水を入れることで電流が下層に伝わらないため、平坦な病変を安全に切り取ることができます。
大腸ポリープ切除後の合併症
安全性が高いため日帰りで受けていただけますが、手術ですので合併症の可能性はゼロではありません。そして、あらかじめリスクをしっかりご理解いただくことで、合併症の発生率を下げることができます。そのため事前の診察時に、合併症やそれを防ぐための注意点などを詳しくお伝えしています。
術後出血(数百例に1例程度)
術後2~3日での発生が多く、1週間後から0%に近付いていきます。切除した傷口からの出血で、便に少量の血液が混じる程度でしたら、安静を保つことで自然に止まります。大量の出血があった場合には、内視鏡を用いた止血術が必要になりますので、速やかにご連絡いただくか、ご来院ください。
大腸穿孔(数1000例に1例程度)
大腸穿孔とは、大腸に穴が開いてしまった状態で、腹膜炎を併発すると致死的な状況になりえるため緊急開腹手術が必要となります。大きなポリープの無理な切除や、ポリープ切除時の過剰な通電は原因となりえます。かなりまれにしか起こりませんが、研鑽を積んだ医師による手術ではさらにリスクが下がります。
すぐ対応できる体制を整えています
当院では、大腸ポリープ日帰り切除術を受けた方に、夜間や早朝でも対応している緊急連絡先(電話番号)をお伝えしています。ポリープ切除を行った後、当日~数日以内に大量出血や、耐え難い腹痛、発熱などの症状が出現した際には速やかにご連絡下さい。適切に対応いたします。ただし、高度な処置が必要な場合には、関連病院を受診していただき、治療を受けていただく場合があります。
リスクを軽減するための注意点
合併症の予防には、患者様が術後どう過ごされるかも大事になります。リスクを軽減するために、下記のような制限をお守りください。
当日、ご帰宅してから
安静を保ちます。
食事は、具のないうどんやおかゆなど、やわらかくて消化の良い、腸への負担が少ないものを少量とってください。(大きなポリープを切除した場合には、術当日は食事摂取を控えていただくこともあります)
数日間~1週間
消化しにくいものを控えながら、徐々に通常の食事に戻していきます。
術後、1~2週間の禁止が必要な事項
- 飲酒
- 力仕事や腹圧がかかる動作
- ゴルフ・テニス・ジョギングなどの運動
- 長時間の運転や乗り物の利用
- 飛行機の利用
- バスタブに浸かる入浴(シャワーは可能)