医院名:仙川の森クリニック 
住所:〒182-0002 東京都調布市仙川町3丁目2−4 ウィステリア仙川2階 
電話番号:03-3300-0003

痔ろう

痔ろう(あな痔)と肛門周囲膿瘍について

痔ろうは『あな痔』とも言われ、肛門の周りにトンネルができる病気です。 直腸と肛門の境界部を歯状線といいますが、ここには肛門陰窩と言われる小さな凹みが10〜12個ほどあります。このくぼみからバイ菌が侵入し、肛門の周りに膿が溜まって腫れた状態を肛門周囲膿瘍と言い、局部の熱感と痛みを伴います。溜まった膿は出口を求めていずれ肛門周囲の皮膚に達し、しまいには破裂し膿が排出されます。膿が体外に出てしまえば症状は改善されますが、破裂せずに膿がたまった状況が続くと、激しい痛みだけでなく高熱が出るようになります。こうした状態を放置すると敗血症やショックなど生命に危険が及ぶ重篤な状況に陥ることもあるので、速やかに医療機関を受診して下さい。局所麻酔下に皮膚を切開し、膿を出す処置(切開排膿術)が必要となります。いずれにせよ、膿を出しきってしまえば速やかに症状は軽快しますが、バイ菌の侵入口となる肛門陰窩から肛門周囲の皮膚にできた出口につながるトンネルは自然には消失せず、残ってしまいます。このようにトンネルが形成された状態が『痔ろう』という病気です。 一度完成された痔ろう(トンネル)は何らかの処理を行わない限り、再びバイ菌が侵入し膿が貯留する状況を何度も繰り返します。最初は1本のトンネルだった痔ろうも、再発を繰り返すと、途中で何本にも別れた複雑なトンネルを形成するようになり、治療が非常に難しくなってしまいます。また、痔ろうは長年放置すると癌化する可能性もあるので、早めに専門の医療機関を受診し、適切な治療を受ける必要があります。

痔ろうの原因

痔ろうの原因は、まだわかっていないことも多いのですが、下痢しやすい人に多い傾向があります。肛門上皮と直腸粘膜の境目となる歯状線には、肛門陰窩という小さなくぼみが幾つかあります。下痢が起こると、この小さなくぼみに便が入りやすくなります。また肛門の緊張が強く肛門内圧が高い人も、便が肛門陰窩に侵入しやすくなる要因になります。通常、便が入っても健康な状態であれば感染を起こしませんが、免疫力が落ちていると肛門陰窩の奥にある肛門腺というところで細菌が繁殖し、感染が起きて肛門周囲膿瘍を発症します。 肛門周囲膿瘍が進行して膿が管状のトンネルを作り、皮膚に出口を作ってしまうと痔ろうとなります。
下痢しやすい方、肛門括約筋の緊張が強い方、糖尿病やストレス、過度の飲酒、喫煙などにより免疫力が低下している方は、痔ろうになりやすいと言えます。また、裂肛(切れ痔)から痔ろうが発生することもあります。特殊なケースとして、潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)に合併することもあります。

肛門周囲膿瘍・痔ろうの症状

痛みや熱を伴う肛門周囲の腫れは肛門周囲膿瘍の段階でみられますが、皮膚に穴が開いて痔ろうになってしまうとこうした症状は治まります。ただし痔ろうになっても、肛門周囲膿瘍が再発すると痛みなどの症状が現れます。激しい痛みを生じて座れないこともあります。熱は38~39℃の高熱になることもあります。

肛門周囲膿瘍
  • 痛み
  • 腫れ
  • 熱感
  • 発熱
痔ろう
  • 皮膚の穴から膿が出て下着を汚す
  • 排便後、拭いたペーパーに膿が付着する
  • 持続する鈍痛や痒み

放置すると痔ろうは複雑化することも

放置すると痔ろうは複雑化することも<痔ろうを放置していると、管状の瘻管(トンネル)がアリの巣のように枝分かれして複雑に伸びていってしまうことがあります。肛門周囲には静脈叢という細かい毛細血管が縦横に走っており、肛門を締める括約筋があってデリケートな機能を果たしています。そのため痔ろうの瘻管が複雑に伸びると、こうした重要な組織を傷付け、肛門の機能を果たせなくなってQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大幅に下げてしまうことがあります。複雑になれば治療(手術)の難易度が高くなるだけでなく、術後のダメージ(肛門機能の低下)も大きくなります。

痔ろうの手術

痔ろうは手術でしか治すことができません。痔ろうの手術では、瘻管の長さ、角度、位置、枝分かれの状態、数などに適した手法を選択する必要があります。そして実際の手術では確実に原発巣まで切除することが求められるため、繊細で正確な技術、経験、知識を持った医師に相談することが重要です。
当院では、痔ろうの手術を数多く行ってきた専門医が、その経験をもとに手術を行っています。すべて日帰り手術となります。

瘻管切開開放術(lay open法)

後方(背中側)の浅い単純痔ろうに適した手法です。後方では括約筋を多少切開しても機能的に問題が起こりにくいとされています。根治性が高く、再発率は約1~2%とかなり低く抑えられます。

括約筋温存術(くりぬき法)

トンネル状の瘻管をくりぬき、原発口(トンネルの入口)を閉鎖する手法です。括約筋が切断されないため、肛門機能の温存に優れています。前方(お腹側)や側方の痔ろうに行われることが多い術式です。

シートン法

シートン法瘻管(トンネル)に医療用の輪ゴムや紐を通し、少しずつ縛っていき、時間をかけて(2~3か月)瘻管および括約筋を切開する方法です。ゆっくり少しずつ切開するため、括約筋は切離と治癒が同時に進行し、肛門機能へのダメージが最小限に抑えられます。肛門の変形が少ないという利点もあります。治療期間が長いことが欠点です。治療中は何度か輪ゴム(あるいは紐)を締め直す必要があり、その際に多少の痛みや違和感が生じることがあります。

院長から一言

一般的に行われている代表的な術式を提示いたしました。当院では、個々の患者様の痔ろうの状態に応じて、術式を選択しております。それぞれの術式の利点と欠点を補うために、各術式を組み合わせたハイブリット手術を行うこともあります。詳細については、術前に説明いたします。
また、術後は、2~3日の自宅療養を要することもあります。痔ろうの状態や術式によって変わるので、詳細は術前説明の際に医師にご確認ください。

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